■ イヌワシの概要

  • 分類:タカ目 タカ科 イヌワシ属 イヌワシ(狗鷲)
  • 学名:  Aquila chrysaetos japonica  (Linnaeus, 1758)
  • 法的な保護と位置付け:

     「種の保存法」に基づく国内希少野生動植物種に指定されています。また、国の天然記念物に指定されています。
  • 環境省レッドリストのカテゴリー:

     絶滅危惧IB類(EN)
イヌワシは、日本の山岳地帯における生態系の頂点に君臨する大型猛禽類です。日本国内の個体数は、もともと多くありません。
北半球に広く分布し、日本では本州を中心に分布しています。
1965年に国の天然記念物に指定されています。
イヌワシは広い森を含む広大な面積のナワバリを持ち、その地域の食物連鎖の頂点に位置しています。

体はオスで約80cm、メスはやや大きく約90cm、翼を広げた長さは170〜210cmです。
全身ほぼ黒褐色で、うなじの羽毛が金色になることから英語でGolden Eagle、中国語では金鷲、ドイツ語ではSteinadler(岩鷲)と呼ばれています。
多くの国や地域に置いて国旗や王室の紋章、部族の長の印として用いられています。
険しい山岳地帯に生息し、数100mに達する断崖を中心に広大な樹林地帯を行動域としています。

飛翔力が大きいため低地や海岸に現れることがあります。

営巣は基本的に岩棚で行いますが、時に針葉樹の大径木を使うこともあります。
巣は長年使用したものでは外径が2m、高さが1.8mにもおよびます。

滋賀では雪深い2月中旬に白色の卵を1〜2卵を産みます。
抱卵やヒナの世話は主にメスの役割で、オスはその間、メスと雛の餌も獲って運びます。
エサ動物はノウサギ、キツネ、ヤマドリ、アオダイショウなどで、行動範囲は広く、20〜60平方キロメートルにおよびます。

現在、国内の生息数は400〜500羽程度と推定されます。巣立ち出来るヒナが少なく、年々減少しています。
生息地の山岳部では、森林伐採やスキー場開発による生息環境の減少やダム建設や林道工事による影響が見られます。
画像:岩棚の巣のヒナと親鳥
画像:シカの幼獣を巣に運ぶ様子

イヌワシの保全には人が近付けない営巣できる岩場と餌動物が住む森林、そして狩場となる草地の確保が重要です。

現在、滋賀県内にはわずか4ペアしか生息していません。

イヌワシの数が減少している最大の要因は、餌となる野生動物の減少とそれらの餌動物をイヌワシがハンティング出来る場所が減少してきているためです。

 

文章:環境省レッドデータブック(2014版) イヌワシ(執筆:山﨑亨)などを基に一部追加(写真:井上剛彦)

■ 東近江市にいたイヌワシ

協議会のメンバーが、初めて東近江市内のイヌワシペアの繁殖を確認したのは1978年にさかのぼります。

1978年から、2017年にペアが消失した約40年間の間には、7羽の巣立ちを確認しております。繁殖成功率は17.5%と決して高くはありません。

繁殖失敗の原因を直接特定することはできませんでしたが、繁殖失敗の中には、産卵しない例や卵が孵化しない例も見られました。

表. 1978年から2017年までの東近江市イヌワシペアの繁殖成功有無

 

 

このペアは2017年9月29日を最後に目撃されなくなり、消失したものと判断されています。

下記の文章は、生息地での最後の目撃記録を公開したものです。

 

【観察日時】
2017年9月29日(金)9:30〜15:00

【天気】
晴れ、風強い、少し肌寒い

【調査目的】
今年の春は繁殖に成功していないと判断されたが、再確認のために観察に入る。

【結果】

午前中は出現なく午後になり出現。

  1.  12:23 成鳥オスと思われる個体が出現。奥の谷との尾根境ピークから上昇して波状飛行を開始し、しばらくずっと続ける。
    急降下で奥の谷内に降下して見えなくなる。12:25
画像:オス成鳥と侵入した若いイヌワシ
  1. 12:29 2個体となって消失地点から帆翔上昇。最初ペアで出現と思われたが1羽は若い個体であることが確認。オス個体に追い出しされているものと思われた。オス個体が追いかけ急降下で攻撃、若い個体は12:35に高空を東にはばたいて尾根超えて見えなくなる。
  2. オスは尾根の上で波状飛行を繰り返してから12:38に高空に上がり、上流の谷奥の方向に一気に滑空して見えなくなった。12:40

【考察】
以上の結果から、若い個体を確認。
ただし今年生まれではないため侵入個体と推察された。
画像:侵入した若いイヌワシを急降下で追い出す